伊神(SC(S)) | 方舟機関

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伊神(SC(S))

この部屋をねぐらにして、もう10年になる。音大進学を機に、東京に出てきた。閑静な住宅街の一角にある入居当初は真新しかったアパートの1階の1室。ようやっと仕事として、指揮ができるようになったのに、いまだ音楽家にはどうしたって不足なこの部屋に暮らしているのは――伊調のためだ。
伊調は、気まぐれにこの部屋を訪れる。気鋭の指揮者として名をあげた今でも、やはり、その奇癖(あるいは悪趣味)をやめない。それを許したのは俺で、もはや慣れてしまったことも事実だ。

きっかけは学生時代。
きっかけっていうには何でもないこと。コンクールの打ち上げで、しこたま酔った伊調を、しかたなく部屋に持って帰った。
結局ヤツが覚醒したのは、日付は変わって、夜も明けて、俺が朝飯の準備をしていた頃合いだった。
「おはよう」
そう言った口は機嫌よく笑んでいて、その手指はいつもどおり、手癖悪く踊っているのだった。厚顔甚だしい。けれども。その心もまたてらいなく軽やかに歌っていたものだから、つい、毒気が失せた。
上の階の住人の鳴らす忙しない足音、ベルの音とともにパンがトースターから跳ね上がり、窓の外からは小学生のはしゃぎ声、そして俺は「おはよう」と返しつつ、牛乳をコップに注ぎ、食卓に着き、遠くに電車が走る衝撃を感じながら、さっくり焼けたパンに甘くて美味しいチョコレートクリームを塗りたくる。
「いただきます」
トーストを齧りかじりしていると、その唇はついに旋律まで溢しはじめた。伊調は、俺の部屋に響く音、すべてをいたく気に入ったらしい。俺の言葉尻すらも含めて。
「食べてくか?」
「うん!」
ただ頷くだけが、やけに歌劇的な音色だった。

トーストを出してやって、食べ終えた伊調を駅まで送ってやった。
別れ際、



<!−−連載完結前に書いた未来捏造−−>
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