方舟機関

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マトミレ

すれちがい様。
ハミュッツが涙していたのを見た。
この目では初めて、見た。
だからといって、立ちどまりはしない。振りかえりはしない。
だって、他人事なのだ。
廊下の突きあたりには図書室がある。入室すれば、聞こえよがしのため息。
吐きたいのはミレポックの方だった。

オネ吹(GX)

藤原優介は視線を感じていた。天上院吹雪が優介を、その手札の裏側を見つめる視線を。
吹雪のターン、バトルフェイズ、攻撃宣言、そして今。
攻撃表示同士の一対一。モンスターのレベルも攻撃力も、優介が劣る。
誘われている。有り体に言えば、吹雪は優介が手札に握っている《オネスト》の効果を発動させたいのだ。
吹雪のモンスターは強力なものの、そのエース《真紅眼の黒竜》ではない。本命に先駆けて、オネストを早々に墓地送りさせておけば、後のデュエル展開で優位に立てる。
……なんて、プレイングにしても言い訳にしても、下手くそがすぎる。
オネスト対策だとしても、わざわざダメージを受けるのはディスアドバンテージでしかない。そもそも優介もオネストを墓地から回収する手段くらい持っている。
吹雪ともあろう者が気付かないはずもない。なのに、そうした。もとより冷静という印象のしない男だが、ことここに至っては、冷静さをなくしていると言うほかない。
対戦相手は優介なのだから。否、優介だから、なのだろう。
「オネストの効果を発動」。一瞬映り、すぐさま消えるソリッドヴィジョン。吹雪のモンスターも破壊される。
吹雪はその様を、睨むように見ていた。ライフカウンターの回転には目もくれず。噛んでいた唇を開き、バトルとターンの終了を宣言する。
優介のターン。誘いに乗ったのは、合理を捨ててもまだ勝利を拾えると思う、その逆上せた頭を冷やしてやるためだ。



<!−−7月、急にオネ吹に狂ったので、今更書いてみようとしてます−−>

刻弾(SC(S))

弾徹也は天籟だ。

突然ですが、こんにちは。
ボクはダニエル。(だから、ボクがダンだ。)
テツヤはボクの友人だ。(というより、ボクがテツヤの友人だ。)
ボクらの出会いは音楽院でのことだ。
実を言うとボクは、当時、別の大学の院生だった。
学校間の単位互換制度を使って、音楽院の授業を受けていた。
音楽家としての素養があるでなし、必然、座学だけ。
自分なりに勉強していても不勉強が否めず、何となく、隅の席に座った。
翻って、いつも、教壇の目の前に居たのがテツヤだ。
いつも。ボクの取る授業には、彼がいた。
二重の学校生活にも慣れた新学期。
その授業を取ったのが、ボクら二人だけだったのだ。
わざわざ教室を使うこともないと、授業は研究室で行われることになった。
ボクらは隣り合って、先生と向き合った。
それ以来、ボクは今日の今まで、テツヤに振り回されている。
何せ、職場まで同じなものだから。
ボクらはオーケストラのスタッフとして、コンサート・ホールで働いている。
ボクは司書で、テツヤは舞台監督。それぞれ頭に補助が付く。



<!−−「見えて聞こえる風がある」の没稿−−>

ユベヨハ(GX)

自由気ままな旅の道中に、ヨハンを訪ねた。
ドイツの最北部、デンマークと国境を接する、入り江に築かれた港町で、彼は祖父とふたり暮らしている。

十代は人見知りをしない。
誰に対しても、気安く気軽く気まぐれだ。
友にも、敵にも、本当に分け隔てなく。
そんな人となりを、図々しいと思うか清々しいと思うかは、人によりけりだ。
この老人の場合は後者のようだ。
愛孫の友人、という贔屓目が大いに入ってのことだが。
久しい再会。対して、浅い付き合い。それにしては軽やかに跳ね返り続ける会話。
ユベルは見守るのみだ。
人間の認知の埒外にいるものだから、仕様がない。
とはいえ、こうも退屈では欠伸が出る。
信用ならない他人ならば、警戒だってするけれど。
この人間こそが、ヨハンの何よりも大切なものなのだと知っている。
それを任されるくらいには、十代は(ユベルも)信頼されているらしい。
裏切るつもりにはなれなかった。
旅の先々の話をありがたがられるのはよくあること。
暇に語られる老後の生活は、大してありがたくもない、寧ろありふれたものだったけれど。
ヨハンだってそうなのだ。
穏やかで細やかな日々を、徒に過ごしている。
かつて語ったという気宇壮大な夢を忘れてしまったかのように。

知りたくなければ、耳を塞いで、聞かなければ良い。
知りたければ、直接、聞けば良い。
ユベルにはできる。できない十代はお気の毒に。
ヨハンが夕食を作ると言って席を立ってから1時間と経っていない。
キッチンには良い匂いが溢れていた。
まだ料理中ではあるらしい。時折、鍋をかき混ぜる音が響く。
「どうした? もう我慢ができないって?」
ユベルがいると疑わず、振り向きざまに問いかけてくる声の、何ともまあ気の抜けていること。
応える代わり、顔を覗き込むように姿を見せてやったのに、目を見開くどころか細めて笑うのだから、毒気を抜かれてしまうのも仕方がなかろう。
ついでとばかりにスープにハーブを振る仕草に、上手に視線を外されただけだと気付いた。
「おしゃべりに夢中さ。おかげでボクはつまらない」
「よかった。ああ、よくはないか。悪いな。オレの孝行に十代を使っちまって」
「お前が相手をしてくれるなら、許してやってもいいけど。どう?」
「いいよ。焼き上がるまで、もう少し掛かるから」
コンロのスイッチを切り、オーブンを覗き込んでから、ヨハンはユベルを手招いた。



<!−−2020/12/27ジェネタイに間に合わなかったもの。いずれ完成させます−−>

獏良(YGO)

僕は何もしていません。
ただ、あの時あの場所にいただけ。
ただそれだけのことで、どれだけの人を傷付けてしまったことでしょう。

僕は何もしていません。
僕は罪を犯したのでしょうか。

……そうです。
僕は人を殺しました。



<!−−「A Daydream Believer」の没稿−−>

アークライト家(ZEXAL)

父から便りが届いたのは昭和二二年の暮れのことであった。

僕はといえば、一九年からずっと、父のご友人を頼り、信州に疎開していた。出立の日、父は僕に言って聞かせたのである。「こちらが静かになったら、迎えに行くよ」。二〇年の夏、陛下の玉音にて敗北が知らされた。その二月ほど後、父から便りがあった。「まだ君を迎えることは出来んから、待っていてくれたまへよ」と。以来、音沙汰はなかった。けれども、下宿代は滞ることなく払われていたそうだから、父も兄らも、大事なくやっていらっしゃるだろうと見当をつけた。きっと、お忙しいのだ。何せ父は偉いお医者さまであるから。そう自分を慰めた。
父のご友人を頼ったとはいうものの、あの、小さな山村の大きな屋敷に、その人はいらっしゃらなかった。というのも、ご友人の一家は大陸に渡っていらしたから、国元たる山村にはその老いた母君だけが残り、留守していたのである。つまり、僕は彼女の世話になり、彼女を世話していた次第だ。

父の迎えを待つうちに、その、ご一家が帰ってこられた。



眠られぬかと思ったが、煩っているうちに、机に伏してしまったようだ。
そして、呻き声に、目を覚ました。
痛い痛い痛い痛い痛い。
妙に高く、妙にすれておって、僕の覚えとは変わっていたが、トオマスの声であるとわかった。
そういえば、トオマスがどこに臥せっているか、正しくはどこに閉じ込められておるのか、聞かされていなかった。
部屋を出ようと、戸を引いたらば、目前にクリス兄さまがいた。
ついて来なさい。よいのですか。構わぬ。
言われた通り、兄の後ろについてゆく。クリスの手には行李があった。

トオマス兄さまは、庭の庵に居た。中から痛い痛いと聞こえる。
どおりで、昨日、クリスは庭から現れたのだ。
元々の格子戸の上に厚い板張りがされており、やはり後付けとわかる錠が掛けてある。
クリスは僕に、退がれ、戸の前に立つな、と言い、錠を外し、戸を引いた。
何にも起こりやしなかった。
ただ、痛い痛いという悲鳴が、先までより聞こえやすくなっただけである。
覗いてみても、思っていたような、つまりは脳病院のような、惨たらしい光景はなかった。
ただ、惨めな次兄の姿があるばかりであった。

トオマス。
クリスが呼びかけても、呻き、蹲って頭を抱えるトオマスには聞こえなかったろう。
今はそこにいろ。そう言い、僕に行李を寄越した。
黙らないか。言いながら、庵の中に入り、トオマスに近づいたかと思えば、にわかに脇腹から蹴り上げた。そうして仰向けになった体に乗り上げ、腕を抑えた。僕を向き、ミハエル、持っておいで。言うクリスの下で、トオマスは足を暴れさせる。行李のことを指図されたのだと気づき、僕も庵に入った。トオマスの足に当てられぬようにと、恐る恐る、歩を進めた。
クリス兄さまの横に行李を置く。
どうぞ。ありがとう、薬を打つから左腕を抑えてはくれまいか。はあ。



<!−−終戦後昭和パロ−−>
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